【臨床検査技師】とは?健康との関わりを解説

健康

【臨床検査技師】という職業を聞いて、具体的にどんな仕事をしているか思い浮かびますか?医師や看護師と比べて目立つことは少なく、「レントゲンを撮る人?」と誤解されることもしばしばあります。しかし、実は病気の診断や健康管理に欠かせない検査データの提供医療現場において非常に重要な役割を担っています。

本記事では、病院勤務10年以上の臨床検査技師である私たちが、その仕事内容や役割、健康との深い関わりについて詳しく解説します。臨床検査技師の仕事を知ることで、健康診断や病院で受ける検査の意味がより深く理解でき、日々の健康管理に役立てることができます。

この記事を通じて、臨床検査技師という職業の重要性を知り、あなたの健康に関心を持つきっかけになれば幸いです。

はじめに

さっそくですが、

みなさん、臨床検査技師と聞くとどんな方を思い浮かべるでしょうか?

『レントゲンをとる人!(診療放射線技師)』を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

また、医療従事者といえば医師や看護師が主に注目されることが多く、臨床検査技師の役割はあまり知られていません。

しかし、実際には血液検査や尿検査、細菌検査、生理機能検査など病気の診断や健康管理に不可欠なデータを提供するのが臨床検査技師の仕事です。わたしたちは目立たない存在ながらも、医療の現場で重要な役割を担っています!

この記事では病院勤務10年以上のキャリアをもつ臨床検査技師である私たちがその役割と、私たちの健康との関わりについて、わかりやすく解説します。

臨床検査技師とは?

定義

まず、臨床検査技師とは、

厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、厚生労働省令で定める検体検査、及び生理学的検査を行うことを業とする者をいう。

臨床検技師等に関する法律 第二条 より引用

つまり、

病院や検査センターなどで病気の診断・治療・予防に必要な検査をする人のことです。

知人から具体的にどんな検査があるの?とよく聞かれますが、大きくは2つに分かれていています。

検体検査・・・血液・尿などの人体から採取された検査

生理機能検査・・・直接患者さんと接する心電図検査、超音波検査など

わたしたちは働く施設により、担当する検査は多岐にわたります。

仕事内容

さきほどの検体検査と生理機能検査もそれぞれ多くの分野に分かれています。大きい病院ではたらいている臨床検査技師は、1つもしくは複数の領域を担当することになります。

つまり担当する検査は独立して専門性が高いということです!

それでは各分野について具体的に解説します。

検体検査

最近ではほとんど専用の機械による自動化が進んでいます。機械では判定しきれない場合には、顕微鏡などを用いて、人の目で判断して正確な結果を報告しています。

・微生物学的検査

患者さんから採取した尿、便、膿、喀痰、咽頭ぬぐい液などを培養することで、感染症の原因となる微生物を特定して薬に対する感受性を検査する領域です。

最近では院内における新型コロナウイルスの対応にも大きく貢献しています。

・血液学的検査

血液中の血球成分(白血球、赤血球、血小板)の数や形態、機能、血液の固まりの速さ(凝固検査)などを検査しています。

身近でいうと、貧血白血病などの血液の病気を見つけるのに大きな役割をになう領域です。

・生化学・免疫学的検査

血液は体外に出ると自然に凝固します。採血管で凝固した血液は遠心分離機(高速回転する専用の機器)を用いると、血球と血清(血漿)に分離します。

生化学・免疫学的検査はこの上澄みの血清を用いて、体内の酵素、脂質、糖質、無機質、ホルモン、ウイルスに対する反応などを測定する検査になります。

よく聞くのは、

  • 肝機能検査
  • 腎機能検査
  • 血糖検査
  • 感染症検査 など

健康診断や医療現場では患者さんの全身状態を把握するのに必須の項目であり、非常に重要な検査となります。

・一般検査

一般検査といえば、尿検査が最も有名です。

尿検査は下記の2つに分かれています。

  • 尿定性検査・・・尿試験紙を用いて、その色調により尿の成分を把握する検査
  • 尿沈渣検査・・・顕微鏡で尿中に存在する固形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌、がん細胞など)を観察

尿検査以外にも、便、体腔液(胸水、腹水、髄液など)を調べる検査があります。

・輸血検査

輸血をするための血液型検査交差適合試験(輸血をする血液との相性をみる検査)、不規則抗体検査(過去の輸血や妊娠により産生することがある抗体を調べる検査)などがあります。

つまり、輸血を安全に行う分野ということです!そのほかにも輸血用血液の在庫管理などの管理業務も兼務しています。

私たちは当直業務では全般の検査を担当することがありますが、輸血検査は一番苦手といっても過言ではない検査でもあります。

理由としては、

  1. 血液型間違いにより患者の生命に直結
  2. 救急や大量出血における超緊急対応
  3. 不慣れな検査による不安

一言でいうと、思わぬ手技のミスにより患者さんの命にかかわってしまう分野です。

そのため、当直中は輸血を来ないことを祈っていることも多々あります。笑

・病理検査

数年前に放映された『フラジャイル』というドラマを覚えていらっしゃるでしょうか。

『フラジャイル』は長瀬智也さん演じる天才病理医・岸京一郎を主人公とした医療ドラマです。これは、病理医たちが患者の命を救うために奮闘する姿が描かれた非常に内容の濃いドラマでした。

その中で野村周平さんが演じられたのが、私たちと同じ臨床検査技師でした!

主な業務は、

  1. 組織標本の作製
  2. 細胞診検査
  3. 病理解剖の介助

病理検査とは手術などにより採取された臓器・組織を用いてがんの最終診断を行う検査です。これは病理医が担う業務になりますが、病理医が診断するための組織標本の作製を担うのが臨床検査技師の役割となります。

次に細胞診検査は、尿や喀痰などに含まれる細胞や子宮頚部や気管支などから擦った細胞から標本を作製して、悪性細胞の有無を調べる検査です!

多くの現場では、細胞診検査は細胞検査士が行い、より専門性の高い結果を報告しています。

細胞検査士

臨床検査技師を取得した上で、実務経験や専門の養成コースを履修するなどして、認定試験に合格することで付与される資格です。

・遺伝子,染色体検査

私たちの体は、たくさんの細胞でできており、その中の「核」という部分には、DNAが収められた「染色体」があります。DNAは体の設計図のようなもので、健康や体質に関わる大切な情報が含まれています。

遺伝子・染色体を調べることで、生まれつきの体質や病気のリスクを知ることができるのが遺伝子・染色体検査です。最近では、がんの治療薬が人によって効きやすいかどうかを予測するのにも使われています。

また、新型コロナウイルスのPCR検査も、この技術を応用したものです。最近では、インフルエンザやほかのウイルスも同時に調べられる検査が登場し、より早く正確に診断できるようになっています。

生理機能検査

心電図検査、肺機能検査、超音波検査、脳波検査などがあり、患者さんの体から直接情報を記録して、体の状態を調べる検査です。

検体検査とちがって、直接患者さんと接します。意外とみなさんも関わったことがあるはず!

・心電図検査

心電図検査は心臓の拍動を電気現象として捉えます。不整脈(心拍の乱れ)狭心症などの診断において、最も簡便かつ重要な検査となります。

私たち臨床検査技師は生体検査に配属されると、一番はじめに覚える検査です。

・肺機能検査

息切れ、呼吸が苦しいなどの症状があるときに、呼吸器(肺・気管など)の状態を調べるために行われる検査です。

健康診断などでは肺年齢で評価される施設もあります。肺の病気の診断・重症度を調べる場合治療効果の成果を確認するときに行われます。

・超音波検査

超音波検査は、私たち臨床検査技師の中でも花形の検査です。超音波検査と聞くと、赤ちゃんのやつ!と思われる方が多いのではないでしょうか。

今では超音波検査の領域は多岐にわたり、

  1. 心臓
  2. 消化器・・・肝臓、胆道、膵臓、腎臓、脾臓、胃、腸管(大腸、小腸)
  3. 泌尿器・・・腎臓、膀胱、前立腺、尿管
  4. 産婦人科・・・胎児、子宮、付属器(卵巣、卵管)
  5. 体表臓器・・・甲状腺、乳腺、リンパ節、皮下腫瘍、関節、運動器
  6. 血管・・・頸動脈、下肢動脈、下肢静脈(表在・深部)、頭蓋内
  7. 健診

全身をみれるといっても過言ではないくらい専門性の高い領域です!この検査は細胞検査士と同様に、専門資格である超音波検査士が担当する病院もあります。

超音波検査士

超音波医学の進歩発展に伴い、日本超音波医学会が超音波の優れた技能を有する臨床検査技師などを専門の検査士として認定する制度。

取得には一定の受験資格があり、領域は上記の7領域に分かれる。

病院では、全て超音波検査士が検査をしているわけではありませんが、ひとつの評価対象としてこのような資格があるのはぜひ知ってもらいたいですね!

私もこの超音波検査士を4領域(体表臓器・消化器・泌尿器・産婦人科)取得しています。

・脳波検査

脳は微弱な電気を出し続けており、その電気信号を増幅して記録するのが脳波検査です。また光や音、深呼吸などいろいろな刺激を加えて、脳の反応を調べていきます。

てんかん脳死判定などに利用されています。

・血圧脈波検査

血圧脈波検査は健診などでは血管年齢などで評価される検査です。つまり、簡易的に血管の硬さ(動脈硬化の程度)や、血管のつまり具合も知ることができます。

  • 血管の硬さ:血管が硬いほどCAVIという数値が高くなります。
  • 血管のつまり具合:両足と両腕の血圧の比(ABI)を算出して、数値が下がれば、足の動脈が詰まっている可能性がある。

いろんな健康イベントなどで血管年齢を測定しましょう!ということで企画されることもあります。

その他

最近では法律の変更により、検体採取業務も拡充されました!

代表的なのは、

  • 採血
  • 鼻腔や咽頭などのぬぐい液を採取する行為(検体採取)

地域の中核病院を受診すると、採血は採血室ですることが多いのではないでしょうか?

この10年間で、臨床検査技師が採血室を運営する病院が主流であり、みなさんと直接接する機会も増えています。

またコロナ禍において、新型コロナウイルスの検査も普及しましたが、この鼻咽頭からのぬぐい液を採取する行為も臨床検査技師の参画の場として注目されています。

2015年に法律の改正により、厚生労働省指定講習会を修了したものが実施できるようになりました!ちなみに私たちも修了後、多くの患者さんに実施しました。

勤務先

私たちは病院だけに留まらず、色んな施設で活躍しています。

例えば、

検査センター  医療機関から依頼された検体を分析。特殊な検査も担当。

健診センター  健康診断や人間ドックでの検査を担当。

・ 病院やクリニックなどの医療機関  患者の診断や治療に必要な検査を実施。

保健所  食品衛生や感染症対策に関する検査を実施。

製薬会社・医療機器メーカー  新規開発や医療機器の研究・開発に携わる。

大学や研究機関  医学研究や教育に従事。

このように活躍できる場面は多く、みなさんの知らないところで大活躍しています!

資格取得

臨床検査技師になるには、厚生労働省が認定する国家資格を取得する必要があります。資格取得の流れは以下のとおりです。

  1. 養成課程の修了 大学・短大・専門学校を卒業(3~4年)することで国家試験の受験資格を取得
  2. 国家試験の合格
  3. 免許の取得 国家試験合格後、厚生労働省の臨床検査技師名簿に登録

免許取得後も、最新の検査技術や医療知識を学び続けることは必須です。特に医療現場にいる私たちは常に勉強しつづけること、先ほど述べた専門性の高い資格(細胞検査士や超音波検査士など)を取得することで、患者さんによりよい検査を提供しています。

臨床検査技師と健康との関わり

私たちはこのブログを通じて、一番伝えたいことが身近な臨床検査と健康に関する疑問です。特に以下の点には注力したいと思います。

  • 病気の早期発見 生活習慣病やがんなどの疾患を早期発見するために注意すること
  • 予防医療への貢献 早期から生活習慣病のリスクを把握し、適切な対策をとること
  • 血液データの活用 健診などで測定した血液データの疑問の解消

臨床検査技師は健康診断や病院での検査を通じて、私たちの健康維持に不可欠な役割を果たしています。現役の私たちが発信することで、最新の臨床検査と身近な健康に関わる情報が得られると思います。ぜひ参考になれば幸いです。

まとめ

臨床検査技師は、医療現場において診断や治療の重要なサポートを行う専門職です。しかし、その役割は一般的にはあまり認知されていません。検体検査、生理機能検査など、多岐にわたる検査を担当し、病気の早期発見や予防医療に貢献しています。

私たちは病院勤務10年以上の臨床検査技師として、日々患者さんの健康を支えるために働いています。臨床検査技師の仕事を知ることで、医療の理解が深まり、より適切な健康管理につながると思います!ぜひ、検査結果の重要性を意識しながら、日々の健康維持に役立ててほしいです。

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